2023年08月02日
『電機連合@見える化通信』Vol.139
~児童手当の拡充で扶養控除の見直し?給付と負担 全体像の提示を~
電機連合の活動の中に「産業政策・社会政策」
の取り組みがあることを知っていますか?
産業政策は電機産業や日本をより豊かに発展
させるため、社会政策は暮らしや生活をより
良くするための取り組みです。
私たちの周りには様々な問題があり、その中
には、個別企業労使の話し合いだけでは対応
しきれないものも多数存在します。
電機連合は働く者の立場から、自らに関係す
る課題について政策・提言をまとめ、政府や
省庁などと意見交換を行い、政策実現を目指
しています。
『電機連合@見える化通信』では、何となく
小難しくて見えづらい政策課題について、そ
の中身を少しずつご紹介していきます。
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~児童手当の拡充で扶養控除の見直し?
給付と負担 全体像の提示を~
政府は児童手当の支給を高校生まで延長する
との方針を発表しました。しかし、この拡充
に伴って扶養控除の見直し案が浮上していま
す。これで本当に少子化対策につながるので
しょうか。
【児童手当の拡充】
岸田政権が推進する「異次元の少子化対策」。
政府は今年6月、2024年度から集中的に
取り組む対策を「こども未来戦略方針」(以
下、戦略方針)としてまとめました。その目
玉の一つが児童手当の拡充です(図表)。
2024年度中に所得制限を撤廃し、支給期
間を現在の中学校卒業までから「高校生年代
まで」*に延長するとしています。
子ども・子育てを社会全体で支える観点から
この政府方針は評価できる内容です。児童手
当の所得制限撤廃をめぐっては高所得者優遇
になるのではないかといった意見が一部にあ
りますが、子育て支援と、貧困対策としての
所得再分配のあり方は区別して考える必要が
あります。
【扶養控除見直し案が浮上
負担増となる世帯も】
一方、この児童手当の支給期間延長に伴い、
「高校生の扶養控除との関係をどう考えるか
整理する」ことが戦略方針に記載されました。
現在、所得税の場合、16~18歳の子ども1人
につき38万円を控除できる仕組みがあります
が、もしこの扶養控除が廃止されれば、支払
う税額が増え、これまで高等学校等就学支援
金制度(高校授業料実質無償化)の対象とな
っていた世帯が対象外となるケースもでてき
ます。世帯によっては負担増となるため、こ
れで本当に少子化の解消につながるのかと疑
問の声が上がっています。
【子どもに関する所得税控除の変遷】
扶養控除と手当をめぐっては、これまでも見
直しが行われてきました。2011年には児
童(子ども)手当の支給を所得制限なしで中
学生まで支給することに伴い、「所得控除か
ら手当へ」の流れの中で15歳以下の子どもへ
の「年少扶養控除」は廃止されました。
その後、紆余曲折を経て2012年には
960万円以上の世帯で手当が減額され、さ
らに2022年には所得制限が導入されてい
ます。捻出された財源は保育園の受け皿整備
に充てられることになりました。
また16歳から18歳の子どもへの扶養控除も所
得制限なしの高校授業料実質無償化の導入に
伴い、縮小(63万円から38万円)されていま
す。その後、高校授業料にも所得制限が導入
されました(図表)。浮いた財源は低所得世
帯の奨学金給付などに充てられています。
政争の具にされてきた側面も否めず、こうし
た度重なる制度変更は、若者のライフプラン
を描きにくくさせて不安の払しょく、ひいて
は少子化の解消にはつながりません。
【給付と負担 全体像の提示を】
少子化対策の強化に必要とされる3・5兆円
の具体的な財源確保策はまだ決まっていませ
ん。政府は年末までに何らかの結論を示す見
通しです。
財源確保策の検討にあたっては、現役世代に
負担が偏ったり、子育て世帯間の財源の奪い
合いではなく、少子化対策の必要性を国民に
訴え、給付と負担の全体像を示した上で、丁
寧な合意形成を図ることが求められます。
【電機連合千葉地方協議会】
・公式HP
(http://www.jeiu.jp/chiba/)
・事務局長ブログ
(https://denki-chiba.seesaa.net/)