活動紹介

2023年02月03日

『電機連合@見える化通信』Vol.133

~前期高齢者納付金の総報酬割導入案 慎重な検討が必要~

電機連合の活動の中に「産業政策・社会政策」
の取り組みがあることを知っていますか?
産業政策は電機産業や日本をより豊かに発展
させるため、社会政策は暮らしや生活をより
良くするための取り組みです。

私たちの周りには様々な問題があり、その中
には、個別企業労使の話し合いだけでは対応
しきれないものも多数存在します。

電機連合は働く者の立場から、自らに関係す
る課題について政策・提言をまとめ、政府や
省庁などと意見交換を行い、政策実現を目指
しています。

『電機連合@見える化通信』では、何となく
小難しくて見えづらい政策課題について、そ
の中身を少しずつご紹介していきます。
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~前期高齢者納付金の総報酬割導入案
           慎重な検討が必要~

前期高齢者(65~74歳)の医療費について、
私たち現役世代が拠出する納付金の仕組みを
見直す法改正が国会に提出されます。健保組
合の負担増や協会けんぽへの補助の減少につ
ながる内容であり、見直しにあたっては慎重
な検討が必要です。


【高齢者医療の拠出金のしくみ】

高齢者に関する医療費の財源は、私たち現役
世代も拠出しています。その拠出金は2種類
あり、一つは健保組合や協会けんぽ等が前期
高齢者(65~74歳)の医療給付を分担する
「前期高齢者納付金」、もう一つは後期高齢
者(75歳以上)が対象の「後期高齢者支援金」
です。
前期高齢者納付金は前期高齢者の医療給付に
かかる費用を保険者間で調整するため、その
加入者の割合に応じて負担します。65歳を過
ぎると多くの方が退職して国民健康保険(市
町村などが運営、以下国保)に移行しますが、
年齢的にも医療機関にかかる機会が多くなる
ため、国保の負担が大きくなります。そこで、
前期高齢者の加入割合が低い健保組合や協会
けんぽなども納付金という形で分担していま
す(図表1)。具体的には、前期高齢者の加
入率の全国平均である約15%より低い健保組
合や協会けんぽ等は納付金を支払い、平均よ
りも高くなっている国保が交付金として受け
取っています。
後期高齢者の医療費はその40%を、現役世代
が入る健康保険、協会けんぽ、共済組合、国
保が後期高齢者支援金として負担します。
2019年から負担能力に応じた負担とする
ため、被用者保険(健保組合や協会けんぽ、
共済組合)の支援金の額について加入者数に
応じた調整から報酬水準に応じた調整とする
全面総報酬割となっています。
高齢化の進行で、「前期高齢者納付金」と
「後期高齢者支援金」を合わせると、健保組
合全体で年間支出の約43%(2021年度)
を占めるなど、大きな負担となっています。


【改正案の内容と影響】
今回の改正案では、前期高齢者納付金につい
て2024年度から、負担能力に応じた負担
のしくみとするため3分の1を総報酬割とす
ることにしています。報酬水準が高い健保組
合では負担が増える見込みで、政府の試算で
は協会けんぽの納付金は約970億円の減少、
健保組合は約600億円の増加となっていま
す(図表2)。
前期高齢者納付金への総報酬割が導入された
場合、毎年行っている協会けんぽへの国庫補
助も約1290億円削減される見込みです。
そのため連合含む被用者保険関係5団体は
2022年12月、削減した国庫補助を現役世
代の負担軽減に充てるよう意見書を政府に提
出しました。



【健保組合の負担増に懸念】
今回の総報酬制の導入案について連合は、慎
重な検討が必要との見解を示しています。保
険料に比例せず給付がフラットな健康保険制
度において給付と負担の関係をいっそう歪め
ることになり、義務的支出が増えるため積極
的な保険者機能(医療費の適正化や健康増進
の取り組みなど)の発揮にも問題であるから
です。電機連合加盟組合の健保組合からも
「健保組合の負担が大きくなることが容易に
予想される。保険料率の上昇は可処分所得の
低下を加速させる」と懸念する声が上がって
います。
政府は現役世代の負担をできる限り抑制し、
企業の賃上げ努力を促進する形で健保組合等
へ支援を行うとしています。真に現役世代の
負担減につながるよう、私たちは今月からは
じまった通常国会に提出される法案の内容や
その議論を注視していく必要があります。



【電機連合千葉地方協議会】
 ・公式HP
 (http://www.jeiu.jp/chiba/)
 ・事務局長ブログ
 (https://denki-chiba.seesaa.net/)


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