2021年06月15日
『電機連合@見える化通信』Vol.116
カーボンニュートラルに向け動き出した企業 ~世界の動きと自社の対応に注目を~
『電機連合@見える化通信』Vol.116
カーボンニュートラルに向け動き出した企業
~世界の動きと自社の対応に注目を~
電機連合の活動の中に「産業政策・社会政策」
の取り組みがあることを知っていますか?
産業政策は電機産業や日本をより豊かに発展
させるため、社会政策は暮らしや生活をより
良くするための取り組みです。
私たちの周りには様々な問題があり、その中
には、個別企業労使の話し合いだけでは対応
しきれないものも多数存在します。
電機連合は働く者の立場から、自らに関係す
る課題について政策・提言をまとめ、政府や
省庁などと意見交換を行い、政策実現を目指
しています。
『電機連合@見える化通信』では、何となく
小難しくて見えづらい政策課題について、そ
の中身を少しずつご紹介していきます。
カーボンニュートラルに向け動き出した企業
~世界の動きと自社の対応に注目を~
Vol.112の見える化通信でCN2050宣言と電機連
合の取り組みについてご紹介しました。今回は、
その後の政府や世界各国、企業の動きについて
ご紹介します。
【日本政府の動きと企業支援】
政府は2020年10月の「2050年カーボ
ンニュートラル(以下、CN2050)宣言」
を受け、同年末に「CN2050に伴うグリ
ーン成長戦略(以下、グリーン成長戦略)」
を発表しました。また、2021年4月の気
候サミットでは、2030年の温室効果ガス
削減目標を、これまでの2013年比26%か
ら46%へ大幅に引き上げることを表明するな
ど、カーボンニュートラルに向けた動きは加
速しています。
この高い目標を達成するためには、私たち電
機産業をはじめとする企業による取り組みが
不可欠です。政府は、研究開発投資を支援す
る2兆円の基金に加え、「カーボンニュート
ラルに向けた投資促進税制」を創設し、温室
効果ガス削減効果の高い製品の生産や、生産
工程の脱炭素化など、CN2050をめざす
企業の取り組みを税制面からも支援しようと
しています。
【世界各国やグローバル企業の動き】
EUや米国では、「炭素国境調整措置」の導
入が具体的に検討されています。これは地球
温暖化対策が不十分な国からの輸入品に事実
上の関税を課すもので、導入されれば、発展
途上国など環境規制が緩い国々で作られた製
品のコストが上がり、こうした国々への製造
拠点の流出を防ぐことにも繋がります。温暖
化ガスの排出削減と同時に自国の産業を保護
することも期待されます。
また、米国のAppleは、2020年7月
に「2030年までに自社の事業活動に加え、
製品に組み込まれる部品や部品の原材料、さ
らにはユーザーが製品を使用する時の電力ま
でを含め全体でカーボンニュートラルを目指
す」とする、CO2排出ゼロ計画を発表しま
した。これにより、世界中のサプライヤー企
業は2030年までに同社向けの部品などを
再生可能エネルギー100%で生産すること
が求められることとなり、多くの日本企業も
例外ではありません。
企業にとっては資金調達の面からもカーボン
ニュートラルの取り組みは必須となりつつあ
ります。企業への投資判断の基準として財務
情報だけでなく、環境・社会・企業統治を考
慮する、いわゆるESG投資が急速に広がっ
ています。カーボンニュートラルを進めるこ
とは、企業価値を向上させ、ビジネスチャン
スの獲得にも繋がるのです。
【動き出した日本企業】
日本でも、すでにグローバル企業を中心に多
くの企業がTCFD※1やSBT※2、RE
100※3などの気候変動に対応した経営戦
略の開示や、脱炭素に向けた目標設定に関す
る国際的な枠組みを取り入れた経営を進めて
おり、それら企業の数は世界トップクラスで
す。(2021年5月現在)
電機連合加盟組合企業においても、再生可能
エネルギーで製造した水素で動く燃料電池フ
ォークリフトを使って構内物流のCO2ゼロ
化を進める企業や、駐車場や屋根に設置した
メガソーラーの発電で事業所の電力を賄って
いる企業、リサイクルPETボトルを使った
新たな再生樹脂材料を製品の外装に採用して
いる企業など、CN2050に向けた様々な
取り組みが行われています。
※1 気候関連財務情報開示タスクフォース
※2 産業革命時期比の気温上昇を「2℃未
満」にするために、企業が気候科学に
基づく削減シナリオと整合した削減目
標
※3 事業活動にもちいるすべてのエネルギ
ーを再生可能エネルギーにより調達し、
温室効果ガスの削減を目指す国際的な
取り組み
【私たちは何をすべきか】
多くの企業が取り組みを進めている一方で、
グリーン成長戦略だけではなく、2030年
時点での具体的な電源構成が明確にならなけ
れば企業として投資の判断は難しい、という
意見も寄せられています。電機連合としても
この状況をふまえ、2021年4月に経産省
と環境省に対し、国としてのさらなる検討加
速と支援拡大を要請しました。
CN2050を巡る世界の動きは目まぐるし
く変化しており、私たちはこの流れに取り残
されるわけにはいきません。一人ひとりが、
世界の動きや自社の対応を注意深く見守って
いくことが大切です。
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