2015年10月09日
『電機連合@見える化通信』Vol.56「どうする?消費税の負担軽減策」
『電機連合@見える化通信』Vol.56
「どうする?消費税の負担軽減策」
電機連合の活動の中に「産業政策・社会政策」の取り組みが
あることを知っていますか?
産業政策は電機産業や日本をより豊かに発展させるため、社会政策は暮らしや生
活をより良くするための取り組みです。
私たちの周りには様々な問題があり、その中には、個別企業労使の話し合い
だけでは対応しきれないものも多数存在します。
電機連合は働く者の立場から、自らに関係する課題について政策・提言をま
とめ、政府や省庁などと意見交換を行い、政策実現を目指しています。
『電機連合@見える化通信』では、何となく小難しくて見えづらい政策
課題について、その中身を少しずつご紹介していきます。
●●電機連合の社会政策●●
※消費税率の引上げに伴う低所得者対策は、単一税率の維持を前提に、
基礎的消費にかかる消費税負担分など一定額を所得税から控除(も
しくは給付)する制度を導入する。
本制度導入までの間は現行の簡素な給付措置について、必要な改善
や給付水準のあり方等を検討した上で、これを継続する。
*「総合合算制度」の実現に向けた検討を進める。
2017年4月に消費税率が8%から10%に引き上げられる予定です。これに
伴い、政府・与党では消費税の負担軽減策をどうするかが論議されてい
ます。
年末までには取りまとめが行われる予定ですが、最近になって財務省か
ら「還付制度」なる新たな案が示され、公明党が難色を示すなど論議が
紛糾しています。
ここでは過去の経緯も振り返り、改めて消費税の負担軽減策について考
えてみましょう。
○一体改革での論議
消費税には所得に関わらず一律に一定の税率がかかるため、低所得者ほ
ど税負担が重くなるという逆進性があります。そのため2012年に民主党
政権下で成立した社会保障・税の一体改革関連法における消費税法改正
法の附則では、自民・公明との三党合意の末、10%に引き上げる際は低所
得者へ配慮する観点から、給付付き税額控除等と複数税率(軽減税率)
について検討する旨の規定がされています。
しかしながら、その後政権が代わり、2015年度与党税制改正大綱では「軽
減税率制度については・・・税率10%時に導入する。平成29年度からの導入
を目指して・・・早急に具体的な検討を進める」とされ、現在は「軽減税率
の導入ありき」で検討が進められています。
○軽減税率の問題点
生活必需品などに低く税率を設定する軽減税率は、消費者に見えやすい
形で負担が軽減されるので分かりやすく、ある世論調査では国民の8割
が支持しているという結果もあります。
しかし一方で問題点も多く指摘されており、導入には冷静な判断が必要
です。
「精米のみを対象」とした場合、餅は軽減税率、甘い餅(大福)は標準
税率?、また「酒類を除く飲食料品を対象」とする場合、居酒屋での酒
(標準税率)とソフトドリンク(軽減税率)がまざった「飲み放題メニ
ュー」の適用税率をどうするか?。
これらは与党税制調査会の会議資料からの抜粋です。こうした例からも
分かるように、軽減税率を導入した場合、対象品目の線引きがとても難
しく、利権の温床となってしまいかねません。
何より高所得者ほど負担軽減の恩恵を受けるため、本来の目的である低
所得者対策となるのか疑問です。
さらに対象品目をどうするかにもよりますが、軽減税率導入に伴う税収
減は約1.3兆円とも推測されており、その穴埋めをするために、より高い
消費税率に引上げなければいけない事態となってしまっては本末転倒です。
経済界も事業者の事務負担が増える、との理由から反対しています。
しかしながら、新聞を軽減税率の対象品目としてほしい新聞業界はこの
あたりの問題点を積極的に報道していないように感じます。
○給付付き税額控除の検討を
翻って、もう一方の案である給付付き税額控除とは、所得税の納税者に
対して基礎的消費にかかる消費税負担分など一定額の税額控除を与え、
また控除しきれない分や課税最低限を下回る低所得層に対しては現金給
付を行う制度です。
連合、電機連合では、単一税率の維持を前提に、低所得者への配慮や財
源(税収)の確保、そして所得再分配機能強化の観点から、この給付付
き税額控除の導入を求めています。
また本制度導入までの間は、現行の「簡素な給付措置」(2015年度は
「臨時福祉給付金」の名称)を、改善や給付水準のあり方等を検討し
た上で継続する、としています。
最後に、電機連合は税制内に留まらず、医療・介護・保育・障がい等に
関する自己負担の合計額に上限を設ける、制度横断的な「総合合算制度」
も低所得者対策には効果的だと考え、検討を進めるよう求めています。