2014年08月29日
電機連合@見える化通信Vol.42【日本の技術で世界の人々の健康といのちを守る】
電機連合@見える化通信Vol.42
【日本の技術で世界の人々の健康といのちを守る】
電機連合の活動の中に「産業政策」の取り組みがある
ことを知っていますか?
産業政策とは、電機産業や日本をより豊かに発展させる
ための取り組みです。
私たちが働く電機産業に活気があり、企業の業績がよく
なければ、雇用の維持・拡大や賃金などの労働条件の改
善は厳しくなります。
そこで、働く者の立場から電機産業が直面しているさま
ざまな課題を見つけ出し、その解決方法(法改正や制度
策定など)を考えて「産業政策(政策制度課題と私たち
の見解)」として取りまとめ、毎年、政党や省庁などと
意見交換を行って、政策実現を目指しています。
『電機連合@見える化通信』では、何となく小難しくて
見えづらい、でも私たちの暮らしをより良くするために
大切な産業政策の見える化に向けて、その中身を少し
ずつご紹介していきます。
●●電機連合の産業政策●●
*承認審査について、安全性を担保しつつ迅速化
*製造管理・品質管理調査(QMS 調査)の効率化を図る
*研究開発促進のため、治験の基準・ガイドライン等の
法整備
医療機器の導入を促進するため、電機連合が2012 年
に政府へ要求した薬事法改正法案が2013 年末の臨時国
会で成立し、2014 年中に施行されることになりました。
医療機器を製造販売するには、薬事法による規制があ
り、人体へのリスクの高い製品については審査を受けて
承認・認証を取得する必要があります。しかし、薬事法
はもともと薬害を取り締まる法律のため、医療機器にも
医薬品と同様の規制がかかっています。そのため、医療
機器の審査期間が欧米よりも平均で約1年半も長くなる
「デバイス・ラグ(承認等までの時間差)」が生じてお
り、技術的に実現可能な医療が迅速に提供できない問題
が生じています。
電機連合では、デバイス・ラグを解消するには、医薬
品とは別に医療機器の特性にあわせた規制が必要である
と考え、審査において医薬品と医療機器の取り扱いを分
けるように政府に要求してきました。それが今回の法改
正により、法律名が「医薬品医療機器等法(医薬品、医
療機器等の品質、有効性及び安全性の確保に関する法律)
」に変更され、医薬品と医療機器が別々の章で規定され
ることになりました。
医療機器の迅速な実用化と規制の合理化を図るための
改正で、医療機器産業は大きなビジネスチャンスを迎え
ようとしています。医療機器の世界市場(2012 年)は、
世界規模での高齢化の進展と新興国の需要拡大を受けて
30 兆円(約3000 億ドル)を超えており、今後も高い成
長率が見込まれます。このチャンスの波に乗って国内の
医療機器産業を活性化させて国内外に医療機器導入を進
めて、世界の人々の健康といのちを守ります。
【安全性を担保しつつ、承認等審査・定期調査を効率化】
政府は『医療機器産業ビジョン2013』において、2020
年までにデバイス・ラグ「0」を実現するとしています。
これに向けて、登録認証機関(民間)の対象審査である
医療機器の範囲を拡大し、総合機構(独法)の対象審査
となる新医療機器の重点化・迅速化を図るとしています。
また、承認・認証を取得した医療機器は、定期的にQ
MS調査(製造管理・品質管理の調査)を受けることが
義務化されています。QMS調査は、国際規格ISO13485
(医療機器の品質管理)に準拠した内容ですが、調査方
法が異なることが、国際規格との整合性からみて問題で
す。ISO13485 では、設計から市販後まで一連を1つの
システムとして調査を行っていますが、日本では例えば、
研究所や製造工場の所在地が異なる場合、別々に調査が
行われるため、時間や費用が過剰に掛かったり、品質管
理システムが分断されています。これが法改正により、
都道府県による調査を廃止し、1つのシステムとして集
約して調査を行い、合理化を図ることになりました。ま
た、現行法では、医療機器のリスク別に調査者が分かれ
ているのに、QMS調査の中身がほぼ同じであるため、
こちらについても効率化を図ります。
さらに、海外で医療機器を販売するには、国別の規制
対応が必要で、海外へ進出する多くのメーカーが「米国
FDA」や欧州の「CE マーキング」の認証を取得してい
ます。特に米国 FDA 認証を取得した機器は、世界市場
でトップブランドとして受け入れられると言われていま
すが、その審査は年々厳しくなっています。その上で
ISO13485 の認証を得れば、この機器は各国から比較的
スムーズに受け入れられます。また、国際会議では医療
機器の規制整合に向けた取り組みが進められています。
海外の規制動向を踏まえて安全性を担保しつつ、審査の
迅速化を進めていきます。
【研究開発を促進するための法整備を進める】
日本の医療機器の輸出入(2011 年)を見ると、輸出
4809 億円に対し、輸入が1兆584 億円と輸入超過とな
っています。日本が海外で市場シェアを獲得している機
器のほとんどが診断系(内視鏡、超音波装置等)で、治
療系(心臓ペースメーカー等)は競争力がなく輸入に頼
る状況です。優れた医療機器が生まれるには、腕の良い
医師が多いことと、優れたモノづくり技術があることが
必要です。日本は両者がそろう希少な国ですが、メーカ
ー側がリスクを回避して確実性を重視し、治療機器の研
究開発を控えてきたことが要因となっています。
政府は『日本再興戦略』において、2030 年に向けて、
国際競争力を有する医療機器を開発し、輸入依存度を
30%以下にし、輸出金額を2倍にするとしています。
日本の治療機器分野を伸ばすためには、国内メーカー
が研究開発を促進しやすくなるよう環境整備が必要です。
メーカーのリスク低減策や国際レベルに合わせた治験の
基準・ガイドラインの作成など法整備を進めます。