2013年09月29日
電機連合@見える化通信Vol.31【いのちがあぶない!老朽インフラを整備せよ!】
電機連合@見える化通信Vol.31
【いのちがあぶない!老朽インフラを整備せよ!】
電機連合の活動の中に「産業政策」の取り組みがあることを
知っていますか?
産業政策とは、電機産業や日本をより豊かに発展させるため
の取り組みです。私たちが働く電機産業に活気があり、企業
の業績がよくなければ、雇用の維持・拡大や賃金などの労働
条件の改善は厳しくなります。
そこで、働く者の立場から電機産業が直面しているさまざま
な課題を見つけ出し、その解決方法(法改正や制度策定など)
を考えて「産業政策(政策制度課題と私たちの見解)」とし
て取りまとめ、毎年、政党や省庁などと意見交換を行って、
政策実現を目指しています。
『電機連合@見える化通信』では、何となく小難しくて見え
づらい、でも私たちの暮らしをより良くするために大切な産
業政策の見える化に向けて、その中身を少しずつご紹介して
いきます。
【いのちがあぶない!老朽インフラを整備せよ!】
2012年12月に起きた中央自動車道の笹子トンネルの天井崩落
事故では9人が死亡する大惨事となりました。原因は天井板
を固定するボルトの老朽化で、この個所は同年9月の定期点
検で問題なしとされていたため、点検方法や公共インフラの
老朽問題が浮き彫りとなりました。
高度経済成長期(1950〜70年代)に整備された大量の公共イ
ンフラは、建設から30〜50年経過しており、2020年頃から橋、
トンネル、下水道、港湾など多くの公共インフラが一斉に更
新時期を迎えることになります。このまま放置すれば経済や
生活に大きな影響を与えかねないことから、早急な対策が迫
られています。
特に橋やトンネルなどは生命にかかわる重大事故に繋がりや
すいため、予防保全が重要です。しかし、こうした設備の点
検は5年に1度が一般的で、また、技術者が目視や打音より劣
化状況を手作業で確認する検査のため、スキルの差や見落と
しが問題視されています。さらには、技術者不足や地方自治
体の財政難も問題を深刻化しています。
この問題解決策として注目されているのが、センサーや画像
認識技術を用いてICTにより異常を検知したり、事故を予測
するモニタリングシステムです。ICTによる予防保全を行う
ことで、従来よりも1〜3割コスト削減できると試算されて
います。
<国による老朽インフラ対応の勧告強化と助成措置の設置>
2013年3月に国土交通省は、2013年度末までに社会インフラ
の総点検を実施して必要な修繕を行い、2014年度以降に長寿
命化計画等を策定するとしています。
2007年策定の長寿命化計画事業では、修繕が必要な橋梁が全
国に約6万件強あることが判明しました。しかし、修繕計画
を策定した87%のうち、実際は15%しか修繕されていません
でした。老朽インフラ対策が絵に描いた餅とならないように、
国が評価基準を作成し、地方自治体はその基準にしたがい、
施設・設備の状況を評価、公表することで、現状認識の国内
共有化を図ります。さらには、国がリードして対応方策を検
討し、実現可能な財政面での助成措置の設置や対策勧告を強
化するなど、着実に設備更新や補修・補強が図れるようにします。
<日本のセンサー技術で安全・安心な社会インフラを実現>
政府は2013年6月に「世界最先端IT国家創造宣言」を閣議決
定しました。2020年度までに国内の重要インフラ・老朽化イン
フラの20%についてセンサー等の活用による点検・補修を行い、
課題解決の成功モデルを構築し、国際展開を図るとしています。
東京ゲートブリッジには、「橋梁モニタリングシステム」が採
用され、路面下などにさまざまな種類の光ファイバーセンサー
が装着されています。ひずみや振動、傾斜などの大量のセンサ
ーデータをICTによって測定・蓄積・分析し、いつもと違うわ
ずかな異常や損傷など技術者でも気づかないような変化も見逃
さずにリアルタイムで見える化し、維持管理の高度化を図って
います。
しかし、光ファイバーセンサーのシステムは高額な初期費用、
配線工事やメンテナンスの負担、センサーの大きさ等の理由か
ら導入が進んでいません。そのため、無線・超小型・自立電源
型(電池交換不要の振動発電や小型太陽光発電等)の次世代
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems:微少電気機械
システム)センサーの実用化に向けて、経済産業省がプロジェ
クトを設置し研究開発を進めています。
世界に先駆けて実用化できれば、国際競争力が大きく向上する
と期待されています。MEMSセンサーは、日本の電機産業に
おける得意分野の一つであり、自動車のエンジン制御やスマホ
の画面回転・万歩計など幅広く活用されています。
センサー技術等を活用した次世代インフラの市場規模は、2030
年には国内で33兆円、海外で374兆円と予測されています。
老朽インフラ問題は諸外国にも見られており、MEMSセンサ
ーのさらなる研究開発を進め、電機産業が持つ優秀なセンサー
技術や画像処理技術を駆使した効率的な監視・管理体制が可能
となる次世代インフラの標準システム化を早急に確立し、安心・
安全な社会インフラを実現し、日本や国際社会へ貢献していきます。